「プレジデントオンライン」に記載された記事です。
「半沢直樹」には、銀行員出身の原作者ならではのリアリティがあるそうですね。
銀行員の多くがこの番組を見ているとか。
この番組の見方によって、あなたが一流なのか二流なのか
その違いについて、この記事の中に書かれています。
なるほどです。
全文を読みたい方はつづき↓をどうぞ。
以下、記事全文
同じドラマでも一流のエリートと庶民とでは、その観方が全く異なることが判明!
あなたはどちらだろうか。
■銀行関係者はみんな見ている
エリート銀行員の痛快な復讐劇を描いて大ヒットしているドラマ「半沢直樹」。
「やられたらやりかえす。倍返し、いや10倍返しだ!」という決め台詞にしびれ、
悪徳上司たちに逆襲するシーンで大いに溜飲を下げている視聴者が多いだろう。
筆者もその1人だ。
人事部次長の小木曽を徹底的にやりこめる場面ではガッツポーズで喝采した。
日本興業銀行に22年間勤務し、半沢と同じく融資課長を務めた経験のある
岩崎日出俊氏は、銀行関係者のほとんどが「半沢直樹」を熱心に見ていると語る。
「実際には、海外資産をあんなに早くは押さえられないし、
国税庁には基本的に勝てません。
でも、銀行員から見ても80%以上のリアリティがあるドラマです。
原作者の池井戸潤さんが三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)出身だからでしょう。
事実は小説より奇なり、ですね」
ただし、岩崎氏の周りにいるエリート銀行員たちは「グッとくる」個所が
筆者とは違うという。
「前半のドラマで大阪西支店融資課が発揮するチームワークは、
現実の銀行業務に近いものがあります。
半沢課長は部下を飲みに連れていって懐柔するのではなく、
銀行員としての志と矜持を忘れずに働く背中を見せることで課を率いている。
本来あるべき銀行員の姿を見せてもらい、
『我々がやっている仕事はけっこう面白いのだ』と再認識した人が多いようです」
30代前半の頃から新卒採用の面接官もやっていた岩崎氏は、
組織の仲間として迎え入れる基準は「志の有無」に尽きると断言する。
「銀行の採用面接には実に様々な人が来ます。
志がなく、高給や安定、規則正しい生活を求めてくるような人はまず落ちますよ。
銀行員の志とは、本当に必要としている人に正しくお金を貸して仕事や生活を
助け、ひいては日本経済の活性化に役立つことです」
しかし、激烈な出世競争にさらされる過程で入行当時の志を忘れていく人も
少なくない。
「半沢直樹」では、不正の金を懐に入れて責任は半沢に押しつけようと画策する
浅野支店長、その腰巾着として半沢をいじめる江島副支店長が登場する。
岩崎氏によれば、横暴な支店長をヨイショして出世を図る副支店長という構図は
銀行では珍しくない。接待費を「行内接待」に使ってしまう人もいる。
ドラマでも、浅野が人事部次長(小木曽!)と料亭で飲み食いするシーンが
出てくる。
だからこそ、志を貫いて上司や本店審査部とぶつかってでも真っ当な仕事を
しようと努力する半沢の清々しさが際立つ。
一流の銀行員が「半沢直樹」に共感するポイントはほかにもある。
勝てない戦はしないこと、だ。
「勝てる見込みがないときは、半沢直樹も悪辣な上司に
『申し訳ありませんでした』と謝るだけです。
ここもリアリティがありますね。銀行では出世して上にいかないと
やりたい仕事もできないので、上司相手に無謀な戦いをするべきではないのです。
ただし、相手が図に乗って脇が甘くなるときが必ずくる。
半沢はそこを逃さずきっちり逆襲します。エリートだからその力もあるのでしょう」
半沢は剣道の達人でもあるという設定だ。暴力に対抗できるだけでなく、
形勢不利のときは1歩引いて呼吸を整え構えを直し、
相手の隙をうかがう精神力も持ち合わせている。
現実にはほとんどの人が半沢のようにはなれない。気概も実力も足りず、
上司に歯向かうリスクに足がすくむ。リスクとは、ドラマでも描かれる
左遷や出向である。
「40代からの出向は事実上の片道切符で、銀行に戻れる可能性は
ほぼありません。
それでも給料の差額を銀行が補てんしてくれる在籍出向ならばマシです。
給与水準が出向先と同じになる転籍出向になると、例えば1000万円の年収が
場合によっては450万円に下がり、住宅ローンが回らなくなったりします」
大手銀行では3年ごとぐらいに異動があるのが普通だ。
つまり、2年も待てば上司の異動か自分の異動によって相性の悪い上司と
離れることができる。
半沢のように反逆しなくても、じっと我慢していれば時の流れが救ってくれるのだ。
ただし、自分を貶めた憎い上司への恨みは晴れず、やるせない気持ちを
抱えながら生きていくことになる。
だからこそ、「半沢直樹」の復讐シーンでわずかに憂さ晴らしするのでは
ないだろうか。
そんな視聴者には同感するが、いかにも二流だ。
半沢が行う融資業務の正しさや機を見て戦うしたたかさ、
部下とのチームワークに共感を覚える一流の組織人との差を感じてしまう。
半沢を超える「超一流」になるには
一方、半沢の「倍返し」思想に疑問を投げかける人もいる。
『大人力検定』などの著者で、「大人とは何か」を探求し続けている
コラムニストの石原壮一郎氏だ。
「倍返しの復讐をすると相手に半分『借り』ができてしまいます。
やられた相手も倍返しで借りを返そうとするでしょう。報復の連鎖を生むのです。
それではスリルとサスペンスの毎日を一生続けることになります。
3カ月で終わるドラマならそれでもいいけれど、長く耐えられたものじゃありません」
確かに、前半のドラマで半沢に逆襲された人たちのうち、支店長の浅野以外は
心から反省しているようには見えない。
最後まで憎しみの目を半沢に向け続けた人もいる。
今後の長い人生で彼らがどんな報復に出るかはドラマでは描かれない。
石原氏は大量採用された半沢らバブル世代では、
40代後半まで銀行に残れている人は少数派だと指摘する。
「上司に手柄を取り上げられ、失敗の責任を押しつけられた経験は
誰しもあるでしょう。
上司に黙々とくっついて働くことで身分を守らざるをえない状況も必ずあります。
その過程で、憎い上司と同じことを気づかないうちに部下にやっているわけです。
そうしないと銀行に残れないから。自分の意思ではなく、上司の命令で
やったかもしれない。
それなのに半沢のような部下から恨みを倍返しされたらたまらないですよね」
石原氏は、半沢に泣いて謝罪する浅野に自己投影して「贖罪が済んだ」と
感じている人もいると推察する。
不正やごまかし、言い逃れ、部下への責任転嫁をしてきた罪を浅野が身代わり
となって謝ってくれているのだ。
「でも、現実の自分は報いを受けずに無事に会社員人生を乗り切りたい。
バブル世代より上の人は複雑で身勝手な感情を持ちながらドラマを見ている
かもしれません」
そんな視聴者がいるとしたら、二流どころか三流の組織人である。
石原氏によれば、半沢の強さを見習いつつも乗り越えて、
「超一流」を目指すには発想の転換が必要となる。
「復讐は倍返しではなく半返しぐらいがちょうどいいのではないでしょうか。
もっといいのは、お世話になった人に恩を倍返しすること。
相手は『こいつにはもっと何かしてやろう』と、いいことがさらに倍になって
戻ってくるかもしれません。
半沢直樹も役に立たなそうな若手の部下でもちゃんとフォローして、
その部下から助けられていますよね。いい連鎖です。
半沢は恨みだけではなくすべてに対して倍返しができる人間なのだと想像します」
とはいえ、悪意のある上司がいる職場に毎日通うのは辛い。
なんとか状況を変えたい。仕返しもしたい。
「仕返しをしても辛い状況は変わりません。むしろ悪化するでしょう。
復讐ばかり考えている人はやることがせこくなります。
つっけんどんな返事をしたり、メールの返信を遅らせてみたり」
上司ばかりか職場全体からの評価も悪くなってしまいそうだ。
ではどうすればいいのか。
「嫌な上司の味方のフリをして、『こうしたほうがあなたの評判がよくなりますよ』
と具体的に提案するんです。
心の中では『倍返しだ!』と言ってもかまいません。憎しみをバネに穏やかに
行動しましょう。
上司からすれば、いじめようとしたヤツが生き生きと働いていることになります。
楽しそうにしているのが最大の復讐なんですよ」
半沢の潔さとしたたかさを見習って一流になるか、
「恨みではなく恩義の倍返し」で超一流を目指すのか。
組織人として大成するか否かの分かれ道だ。
ドラマ「半沢直樹」の
どこに感情移入するかでわかるあなたの一流度
[一流]
●理想の上司とチームワーク
部下に迎合することなく背中でついてこさせる半沢に、あるべき上司の姿を感じる。
[二流]
●「何のために働いているのか」を考えさせられる
社会に出るときは誰もが持っていた「これがやりたい」という思いや志。
40代になっても持ち続ける半沢の姿に、大事な何かを思い出す。
●「2倍返し!」がスカッとする
理不尽な目に遭っても逆らわずに黙々と働くことで身分を守るという
会社員人生を歩んできたため、やられたらやり返す半沢のやり方は痛快度120%に感じる。
[三流]
●悪役への感情移入
上からの理不尽を経験しながら、それと同じことを部下に対してすることで出世してきたため、
浅野支店長に感情移入してしまう。
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